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ツーバイフォー工法はどんな建築方法?どんな特徴があるの?
このページでは「ツーバイフォー工法」について専門的な知識が無い人でも理解できるように、できるだけ簡単に分かりやすく説明します。
住宅展示場に行って、営業マンに「弊社はツーバイフォー工法を採用しているので地震に強いです。」のような営業トークを聞いたことがある人もいるでしょう。
でも、ツーバイフォー工法について詳しく理解している人はそれほど多くありません。
これからツーバイフォー工法の特徴やメリット・デメリット、また多くの人が疑問に思っていることや心配に思っている事などを分かりやすく解説していきます。
これを読めばツーバイフォーについて理解できるので、ぜひ最後まで目を通して下さい。
1.ツーバイフォーの歴史
ツーバイフォー工法の歴史は、アメリカの移民の歴史と繋がりがあります。
1492年のコロンブスのアメリカ大陸発見の後、スペインが本格的な定住移民地をフロリダに設けました。
その後、17世紀頃には、イギリス、オランダ、フランス、ドイツなどの列強諸国も植民地の開発を進めました。
アメリカでは東部の13州がイギリスから独立し(1776年)アメリカ合衆国発展の元になりました。
アメリカでは初期の頃、手に入りやすい丸太を使って柱や梁を架け、草葺きの外壁や屋根の家を立てるようになりました。
石や土を固めて積み上げたり、木造の小屋組で屋根を葺いた家や丸太を使ったログハウスも登場しました。
その後、イギリスの建築技術の影響を受け、梁と柱による架構(かこう)(ポストアンドビーム工法)に、真柱と土塗り壁による外壁を設け、さらに耐久性を高めるために下見板を張ったり煉瓦や石を積んだりしたことで、次第に架構と表面の仕上げが分離して考えられるようになっていきました。
1830年代になると機械による製材と釘の大量生産などができるようになり、シカゴのG・W・スノウが現在のツーバイフォー(2×4)の元になったと考えられているバルーンフレーム工法と呼ばれる工法を開発しました。
第二次世界大戦後になると、大量の住宅需要に対応するために、規格材の組み合わせで、より高い生産性と性能を実現できる現在のツーバイフォー工法であるプラットフォーム工法(Light Frame Construction)が開発されました。
その後も、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は、アメリカやカナダなどで改良され、アメリカ・カナダ政府の協力の下でいくつかの試行建設が日本でも行われました。
1973年に、カナダ政府は在日カナダ大使館職員のための住宅(連棟のタウンハウス)をツーバイフォー工法で建築しました。
またアメリカ政府の働きかけも活発に行われました。
今では当たり前となっている準防火地域での3階建住宅を建築可能にするために、サミットハウスが試行建設されました。
1992年には3,000㎡の木造3階建の共同住宅がアメリカ政府の働きかけで建設され、これが木造の60分準耐火構造の先駆けとなりました。
日本の当初の建築基準法では、都市不燃化政策に木造住宅が寄与することは少ないと考えられていましたが、アメリカやカナダ政府からの働きかけがきっかけとなって、建築基準法が改正され、基準を満たせば木造住宅の建築が可能になりました。
ツーバイフォーの日本への導入は、昭和40年代頃です。
合理的な北米のツーバイフォー工法を導入しようという動きが起こり、昭和49年(1979年)に枠組壁工法としてオープン化されました。
日本に導入された当初は、タウンハウスや住宅都市整備公団(現独立行政法人都市再生機構:略称UR都市機構)の建売住宅などある程度まとまった建築群の建設にツーバイフォー工法が活用されました。
また、住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)も融資制度や仕様書などを整備した事で、工法の合理性などが一般的に広く認識されるようになりました。
住宅メーカーにとっても、個々の住宅の各種性能が高く、個体ごとの品質のばらつきやクレームが少なく、施工管理も容易であることから、ツーバイフォー工法を採用するようになりました。
円高による輸入構造材の価格低下なども後押しし、多くの住宅供給業者がツーバイフォーを標準的な工法として採用するようになりました。
2.ツーバイフォー工法とは?
まず「ツーバイフォー工法」とは「2×4工法」とも呼ぶことがありますが、木造建築の工法の1つです。
注文住宅の建築工法の種類はいくつかあって、大まかに分類するとだいたい以下のようになります。
- 木造系
- 木造軸組工法(在来工法)
- ツーバイフォー工法
- 木質パネル工法
- 鉄骨系
- 軽量鉄骨ブレース構造
- 重量鉄骨ラーメン構造
- 鉄骨ユニット工法
- PC(プレキャストコンクリート工法)
ツーバイフォー工法は、日本語では「木造枠組壁構法」と呼ばれることもありますが意味は全く同じです。
ツーバイフォー構法で家を建てる時には、以下のようなサイズの角材と合板を使いますが、主に使われるのが2インチx4インチ(two by four)のサイズの角材であるためツーバイフォー工法という名称で呼ばれています。
実はあまり知られていませんが、ツーバイフォー以外にも角材の大きさによって以下のようなものがあります。
- ツーバイフォー(2インチx4インチ)
- ツーバイシックス(2インチx6インチ)
- ツーバイエイト(2インチx8インチ)
- ツーバイテン(2インチx10インチ)
ちなみに1インチは約2.54センチメートルですので、ツーバイフォーの角材というのは縦5.08㎝、横10.16㎝のサイズの角材です。
この構法はイギリスのフレーム構法に端を発し、それが西部開拓時代にアメリカに渡りバルーン構法という一気に名前で普及しました。
ツーバイフォー工法は、既製サイズの角材(2インチx4インチ)を部材として枠を作りそれに釘で合板を貼り付けて、厚い壁を作り、さらにそれを組み立てていくという単純な工法で、大工や職人に高度な技術が求められないという特徴があります。
当時のアメリカはどんどん開拓地を広げていき、たくさんの建物を建てる必要があったものの熟練した職人が少なかったために、素人でも比較的習得しやすいツーバイフォー工法が広まったという時代背景があります。
このようにイギリス、アメリカ、日本と普及し、現在では欧米やカナダでは木造住宅の標準的な構法となっており、日本でも1974年頃から木造軸組構法(在来工法)と並ぶ二大工法の1つとして木造建築の世界を2分しています。
基本的には、2x4インチの木材で作られた枠組みに構造用の合板を釘打ちした木製パネルを組み合わせて、床、壁、天井などの面を作って行きます。
在来軸組工法の場合、柱は最大で4mに1本あればいいのですが、ツーバイフォー工法の場合は、約0.5mごとに柱があることになります。
ツーバイフォー工法は木材と合板を釘によって接合して組み立てるために、釘の種類、本数、打ち方が構造強度に大きく影響します。
接合部には、ツーバイフォー工法独自の釘が使用されており、釘はサイズ別に色分けされています。
釘の打ち方で強度が大きく変わるため、適材適所に正確に釘が使用されていることが簡単に分かるようにするためです。
具体的には、緑、黄色、青、赤の4種類の釘があります。
それぞれの釘の長さは以下のようになっています。
- 緑:50.8mm(厚さ9〜12mmの構造用合板打ち付け用)
- 黄色:63.5mm(厚さ15〜18mmの構造用合板打ち付け用)
- 青:76.2mm(厚さ24〜28mmの構造用合板打ち付け用)
- 赤:88.9mm(厚さ38mmの構造用合板打ち付け用)
釘は合板の面に一定の間隔で打ち付けられ、以下のような壁板部分が出来上がります。これを組み合わせて家を作って行きます。
ツーバイフォー工法では、柱が0.5mごとにある。
3.ツーバイフォー工法の特徴
ツーバイフォー工法は、プラットフォーム工法と呼ばれることもあります。その理由は、最初に床を作って、そこに先ほどの壁板部分を組み立てて作っていくからです。
構造用合板は、数枚の板材を繊維方向が直交するように接着剤で貼り合わせて強度を高めており、建物の構造耐力上、重要とされる部分に使用されます。
ツーバイフォー工法では、壁板部分が面として作られそれを組み合わせることで、六面体の箱を作ります。
つまりツーバイフォー工法は面を中心に作られる工法であり、モノコック構造と呼ばれることもあり、非常に強度の高い構造になっています。
国内の大手ハウスメーカーは、お客さまから住宅の建築を受注した後、自ら建物を建てる事という事はほとんどありません。
さて、ハウスメーカーに注文した場合でも、実際に現場で建物の建築・施工をするのは、各地域の地元の下請工務店です。
参考記事:ハウスメーカーと工務店の比較|どちらに注文すればいいの?
したがって、家の出来上がりの良し悪しは各工務店の技術に大きく左右されるということになります。
各工務店によって技術のレベルにはバラツキがありますが、ツーバイフォーの場合、それほど高度な技術が必要とされないので、職人さんの技術レベルによって出来上がりの品質が影響を受けにくいのです。
語弊があるかもしれませんが簡単に言うと、下手な大工さんでもツーバイフォー工法で建てれば、それなりの品質の家が建てられるという事です。
これは国内のハウスメーカーが受注だけをして、現場での施工を各地域の工務店に外注しているという実態からすると、全国的に一定の水準を保って家を建てやすくなるという事になり、ツーバイフォーの大きなメリットになります。
要するに完成品の住宅の品質のバラツキが少なくなり、ハウスメーカーが定めている水準を満たす高品質の家を作りやすい工法ということなのです。
ツーバイフォー工法は規格が統一されていることによって材料の供給が安定し、それにシンプルな構造システムと品質の高さを維持できることが評判の原因になっています。
ツーバイフォー工法は日本の伝統的な建築工法である「木造軸組工法(在来工法)」とよく比較されますが、木造軸組工法より施行が簡単な上に工期が短いのが大きな特徴です。
また、在来工法が線で家を組み立てるイメージなのに対して、ツーバイフォー工法は面で家を組み立てていくイメージなので、一般的には在来工法よりも耐震性に優れています。
ちなみに日本でツーバイフォー工法を採用しているハウスメーカーの多くは、ツーバイフォー材としてSPF材を利用しています。
SPF材というのは、「スプルース(Spruce、米トウヒ)」「パイン(Pine、マツ類)」「ファー(Fir、モミ類」」の頭文字を取ったもので、常緑針葉樹で主な原産地はアメリカ産やカナダ産がほとんどです。
ではこのツーバイフォー工法のメリット・デメリットについて具体的に見ていきましょう。
4.ツーバイフォーのメリット
在来工法である「木造軸構法」と比べたツーバイフォー工法のメリットは次のようになります。
【ツーバイフォー工法の長所】
- 枠組壁工法なので耐震性が優れている。水平荷重や垂直荷重を壁全体で受け止めることができるから。
- 工法がマニュアル化されていて、パネルを立て込む方式なので工事期間が短く完成は早い。
- 気密性が極めて高い。
- 部材相互の密接度が高く、それが防火性と断熱性を高めている。
- 内部の空調管理が容易で省エネに優れている。
- 高度にシステム化・マニュアル化されている技術なので現場の大工さんに高度な技術が不要で品質が均一でムラが無い。
- 壁構造という特性から密閉性・機密性が高いので、火災が発生しても延焼しにくく耐火性に優れている。
以上がツーバイフォー(2X4)工法の主なメリットです。
ツーバイフォー工法は従来工法の木造軸組構法とは異なり現場の大工さんの腕によって家の出来上がりの善し悪しが左右されにくいので、地元の工務店と異なり、大工さんを選べないハウスメーカーに注文する時には大きなメリットになります。
また、ツーバイフォーは角材と合板を組み合わせたパネルを現場で組み立てずに、工場で集中的に大量生産して出来上がったものを現場に運び込むということが可能で、大手のハウスメーカーはその方法を採用していることが多いので、工期が短く早く建物を完成させることができます。
家を建てている間の仮の住まいに住む期間というのは、コスト(賃料等)などの経済的な面やストレスなどの精神的な面でも短い方がいいと思いますので、そういう点でもツーバイフォーはメリットがあります。
ではこれに対してデメリットの方はどうなのでしょうか?
5.ツーバイフォーのデメリット
【ツーバイフォー工法の短所】
- 耐震性が壁によって確保されているため、開口部が制限され、将来的な壁の撤去や貫通などはできず間取りの変更が困難。
- 木を露出したデザインを施したくてもパネルで面が構成されているので困難。
- 同じ理由で木による調湿が期待できない。
- 従来工法に比べて施行できる建設会社の数が少ない。特に小規模の工務店では対応できない事が多い。
- 高温度の環境では気密性が高いので湿気が抜けず腐食の可能性がある。
- モノコック構造であるために設計の自由度が低い。
ツーバイフォー工法は日本ではまだ歴史が浅く、高い技術力と豊富な知識を持った工務店の数が圧倒的に少ないです。
ほとんどの工務店が在来工法で家を建てているため、ツーバイフォーで家を立てようと思って工務店を探しても見つけるのが難しいです。
ツーバイフォーで家を建てようと思うと依頼できる工務店やハウスメーカーの数がかなり絞られてしまいます。
また、ツーバイフォーで建てた家は一般的に窓の大きさの変更、間取りの変更、増築などのリフォームがやりにくいです。
技術的には絶対に不可能ということはないのですが、高い技術で対応できる工務店が少ないし、コストも高くつくので在来工法に比べると難しいです。
6.ツーバイフォー工法を採用しているハウスメーカーの一覧
国内の主要なハウスメーカーや工務店の中で、2x4工法を採用している会社の一覧です。
ツーバイフォー工法を採用しているハウスメーカーでも、独自の技術を組み合わせたりして各メーカー独自の名称を付けている場合がありますが、基本的な技術はツーバイフォー工法です。